いつか土に帰る日まで。

by くり

台所の音。

外が暗くなると、同じ時間に同じ音が聞こえてきた。
包丁の音。みじん切りをする細かい音。

その家は子どもが4人いて、お母さんは継母だった。
白雪姫やシンデレラの継母はひどい人だけど、そこのお母さんは賢明なしっかり者。
包丁の音は、たぶん一番上のお姉さんだっただろう。
その時間に、お母さんはまだ仕事から帰っていなかったのだと思う。

お母さんは、加藤さんといった。
子どもたちは、「加藤さん」とも「かとさん」とも「かっさん」ともつかない呼び方をしていた。
もうすぐ、かあさん、おかあさん。

今は、台所を『キッチン』なんて言うけど、私は台所のほうが好き。
台所には、主婦のどうしようもない気持ちが渦巻いている。
諦めとも不満とも、悔しさ、悲しみが入り混じったような。
それでも主婦が台所を出ていかないのは、台所にはあたたかい火も冷たい水もあるから。
燃やすことも流すこともできる。
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by julie9352 | 2013-09-09 22:28 | ひとりごと | Comments(0)